「君が笑ってくれるなら 僕は悪にでもなる」
大切なものを守るためならば、敢えて魔なるものに身を落とす。そうして悪意に満ちた存在と認知される。最愛の人にいずれ敵対し、おそらくは討たれてしまうことを覚悟の上で。
自分が幸福になることを望まない、望めない。自らが作り上げた新たな世界で他の全ての人が楽しげな笑顔で生きるのを知りながら。杏子とさやかはじゃれあい、マミはなぎさをかばい、まどかは家族に囲まれて。
まどかをも信じない。ほむらにとってただ一人のともだち。けれどまどかにとってほむらは、最高のともだちであっても唯一のともだちではないから。とてもとても大切に扱いはしても、信じ、委ねることは出来ない。
「空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る」
何度も繰り返したまどかを失うとき、その場面ではいつも雨が降っていた。いつもそこで決意を新たにし、今回は自らの命を絶とうとした。けれどそれは適わず、すくわれたその身に悪意をまとい、そのふところにまどかを抱く。
(中島みゆき 「空と君の間に」)